平成31年(=令和元年・2019年)より、遺言・相続にかんする新しいきまりやルールが次々に始まりましたが、当時の新型感染症報道の影響であまり周知されておらず、みなさまに伝わっていないのが現状です。ここでは、主なものをかんたんにお話ししたいと思います。なお、相続のながれや手続きにかんしましては「相続のこと」ページにてお話しをさせていただいておりますので、そちらをご覧ください。
9 遺言・相続のあたらしいきまり 1
1 自分で書く遺言書の目録方式がみとめられた (平成31年1月より)
ご自分で遺言書を書かれるとき、財産がたくさんありますと、すべてを自筆で書くのはたいへんですし、なによりとても疲れてしまいます。そこできまりがゆるくなりまして、財産の部分のみは「目録」方式にしてよいことになりました。
遺言書の本文は今までどおりすべて肉筆ですが、財産にかんしては「別紙」にしてホチキスで留めてもよい、その別紙も、ワープロで作成したり、コピーでもよいこととなりました。
ただし、別紙にも全部のぺージにかならず自筆でお名前を書き、遺言書に押したものと同じハンコを押さなくてはいけません。目録がおもてうら両面になっているときは、おもてうら両面ともに、ご署名とハンコが必要です。
2 夫婦間で住んでいる家の持ち戻しが免除されるようになった (令和元年7月より)
20年以上結婚されいるご夫婦で、住んでいる家を、亡くなる前か、なくなるときに連れ合いのかたにあげたとき、計算上、相続の財産に加えることをしなくてよくなりました。これによって連れ合いのかたの財産のわけ分が増えることとなりました。
今までは、もう連れ合いの物になっていても、数字の上だけですが、「戻して」財産わけを計算していましたので、その分、つれあいのかたの取り分が少なくなっていました。
3 身内の介護にかかったお金を返してもらえるようになった (令和元年7月より)
いま、介護が大きな課題になっていますが、時間的、距離的理由でかならずしも自分の親の介護ができているとはいえないこともあります。そんなとき、近くに住んでいる長男の嫁、甥姪などが介護をしていることがあります。このかたがたは、遺言書がありませんと基本的に何も財産が分けられるかたではありません。
介護をしていれば、ポケットマネーでおむつを買ったり、介護タクシーを呼んだりすることもあるでしょう。そこで、ご本人が亡くなってしまったときに、こういった何も財産が分けられないかたのみが、かかったお金を「返して」と言えるようになりました。
ただし、条件として、ちゃんと領収書などがそろっていることと同時に、そのかたがたが、「自分から」返してと言わなくてはなりません。さらに、これを言えるのは「身内(親族)」だけですので、お友達がどんなに介護につくしても、「返して」とは言えないのです。
お友達も、遺言書がありませんと、財産を分けるかたにはあたりませんし、お身内を介護されるかたが「お金を返して」と自分から言い出せるとも思えません。お世話になったこういったかたがおられるときは、遺言書でしっかり財産を分けるよう書いておかないといけないでしょう。
次のページでも引き続き遺言・相続のあたらしいルール、きまりをご紹介いたします。