遺言書を書く時は、相続の仕組みを理解していないと正しい内容のものを書くことができません。それによって、せっかく書いた遺言書の内容が実現できなかったり、それどころか、かえってもめ事になってしまうこともあります。そのような悲しいことがおきないように、相続の仕組みに関して、少しお話をさせていただきたいと思います。なお、相続のながれや手続きにかんしましては「相続のこと」ページにてお話しをさせていただいておりますので、そちらをご覧ください。

    

   

7 相続の仕組み

       

・財産を分ける対象は人のみ

 どんなに可愛くても、ペットの犬や猫には財産を分けてあげることはできません、ただし、「この猫の世話をしてくれるならこの財産をあげる」と遺言書で指定することができます。

・プラスもマイナスも全部引き継がれる

 家、土地、預金、現金、車、株券などのプラスの財産と同様に、借金、借入金、ローン、連帯保証などのマイナスの財産も、「すべて」いっしょに次の世代に引き継がれます。

・申告に期限がある

 相続が発生すると、すべての財産を引き継ぐのか、すべてをあきらめるのか、差し引いてプラス分だけを受け取るかなどの判断に3か月しか猶予がありません。相続税も、10カ月以内に申告から納付までを終わらせなくてはなりません。短い時間にいろいろなことを決めなくてはならないのです。

・遺言書を書かないと、法律で決まった人に分ける決まった割合がある。

 「法定相続分」と呼ばれるものです。誰に財産が行くのか、どれくらいの割合が行くのかが法律で決まっています。場合にもよりますが、連れ合い、お子様(お孫様)、親御さん、兄弟姉妹などです。遺言書を書きませんと、この割り合いで財産が分けられます。また、この割り合いが相続のさまざまな計算のもとになっています。 

・どうしても財産が行く人たちがいる

 いわゆる「遺留分」といわれるお話しです。遺言書にどう書いても、特定のご親族には必ず財産を分けなくてはなりません。割り合いも決まっています。人にもよりますが、連れ合い、お子様(お孫様)、親御さんなどです。とりあえず遺言書どおりに財産を分け、あとでその人たちが、自分の分をお金で請求することになっています。あらかじめその分を見越した財産の分け方を遺言書で書いておく、生命保険に入って現金を準備できるようにしておく、「清算型」遺言を書いて、現金を用意するなど、しっかりした対策をとることをおすすめいたします。

   

 そのほかにもルール、きまりはたくさんありますが、遺言書を書く上で常にあたまの中に置いておかなければならないのは、これらのルールになると思います。ご自分の書いた遺言書がそのとおりに実現されるよう、かえってもめ事を起こしてしまわないようにじゅうぶん注意して書くことが大事になります。

 そんな時に頼りになるのは、知識と経験を持ったわたくしたち行政書士です。みなさまのお話をおうかがいして、遺言書作成のお手伝いをしたり、引き継ぐ人にどんな人がいるか、どんな財産があるか、の調査もお手伝いいたします。

  

 では次のページでは、遺言書実現のカギを握る「遺言執行者」にかんしてご紹介したいと思います。必ずしも指名しなくてもよいのですが、せっかく遺言書を用意するのなら、遺言書の実現、手続きの手間を考えて、遺言執行者を指名しておくことをおすすめいたします。